hikarimetal’s blog

基本的に自分のためだけにメモとして書いております。

NHK BS 「新型コロナ挑み続ける研究者たち〜東大河岡ラボ100日の記録〜」を見て。

 世界的にも著名な東大の河岡先生のラボで、ワクチンの開発等に取り組んでおられる番組でした。さすがNHKですね。ワクチン教の信者の方には、ぜひ見て欲しいなと思います。おそらく、日本でもワクチンに関してはかなり先頭を走っているラボだと思います。しかし、それでも、7月段階で動物実験というところです。Vero細胞を使っているのは、結構意外でした。もし、Veroである程度の増殖が得られるのであれば、非常に有難い事なのですが、世界的な基礎実験はもう実施されていて、単純にウイルスをVero細胞は培養されるのは難しいとされているのだろうと思います。ですから、アデノウイルスを使ったウイルスベクターワクチンとかmRNAのみを取り出したものとかが今は主流になっているのだろうと。ワクチンというものは、対象が健常者なので、治療薬と異なり基本的に大量生産が必須ですので、良いウイルスが取れても、増殖性が悪いとワクチンとして使用するのは難しいという事になります。Vero細胞であれば、大量培養施設が、日本にはそれなりにありますので、簡単に大量生産できるのでしょうが、インフルの1000分の1という事では無理という事でしょうね。

 しかし、Vero以外で有効な細胞は中々見つからないかもと思ってしまいます。例えば、EB66細胞はどうなのかな?とは思いますが。アヒル胚性幹細胞由来株化細胞です。この細胞は、インフルエンザウイルス用のワクチン(季節性は鶏卵ですが、高病原性インフルは卵を殺してしまいますので、トリインフル用として使用されていると思います)にも使用されており、非常に増殖性が高いと言われております。

 ワクチンを作るのは、とっても難しいのは、ウイルス自体の特性、どのウイルスが最も有効性があって、安全性が高くて、増殖性が強いかという事を見つけ出さなければなりません。そこで、様々な論文を読み参考にします。ただ、その論文にも、いろいろな条件が異なる場合があったりして、なかなか難しい場合もあります。そういった、河原で石を拾うような事からスタートしなければなりません。あくまで、スタートです。そこから、ワクチンの形態、ウイルスベクターなのか、VLPと称される、人造のウイルス状のパーティクルなのか?、mRNAなのか、それともDNAなのか、ウイルスそのものなのか、ウイルスのスプリット(表面抗原だけとか)なのかを検討し、実験するのが第2段階だったりします。それで終わりではありません、今度は、免疫原性を高めるための、アジュバントの検討です、更に、ワクチンの保存方法です。液状なのか、凍結乾燥品なのか、凍結品なのか?、そして更に、DDSと言われる、ドラッグ、デリバリー、システムです。どうやって、人の抗体産生させるのか?という事です。基本的に、獲得免疫として、IgA,IgE,IgGとかがあります。どの抗体の産生を目指すのかという事です。IgAであれば、ミスト噴霧とかであろうし、IgEとかIgGであれば、注射とになると思われます。ようやく、完成という事になるのでしょうが、そうではありません。実は、ワクチンの有効性をどう判断するのかという問題があります。獲得免疫をIgGとして、IgGを検出しました。では、そのIgGが通常の何倍あれば、感染防御出来るのでしょうか?という事を明確にしなければ、ワクチンの有効性は証明できません。

 更に、IgGの産生を、例えばマウスでは認められても、人間では上昇しないという事もあります。ですから、臨床試験において、第1相、第2相、第3相と通常3回の試験を行う訳で、通常第1相は安全性、第2相は有効性ですので、恐らく、第2相では、ワクチン濃度を3種類くらい変えて試験する事が普通です。で、どの程度が感染防御に有効かという事を実証するために、第3相試験があります。コロナのようなdataの無い場合は、1000検体では少ないと思いますので、1万検体くらいは必要なのではないかと思います。

 といった事で、ワクチンは全てが思い通りに行ったとしても、かなり長い時間が必要となる訳です。そして、必ず成功するとは限りません。なんたって選択枝が沢山ありますから。一つ失敗すると、またそこからやり直しです、酷い場合は振出に戻って、ウイルスからスタートする事だってあります。

 ですから、ワクチン教信者の方には、見てもらいたいなという事です。コロナウイルスのワクチンがそんなに簡単に出来るものではないという事、そして、もし、出来たとしても、そういった多くの基礎実験を行っていないワクチンには、大きな危険がつまり、想定外が発生する可能性があるという事を。よくできた、いわゆる枯れたワクチンでも、100万人に一人くらいには重篤な副反応が発生する可能性があります。一億人では100人という事になります。もし、10万人に1人ならば、1000人になります。1万人に1人ならば、1万人になります。1万検体というのは臨床試験では多い方だと思います、そこで臨床試験を行い1例の重篤な副反応が起きた(つまり、死もしくは重度障害)場合は、計算上日本人の人口では1万人発生するという事になります。そう考えれば、臨床試験1000サンプルくらいで、安全性を判断する怖さが理解できると思います。ワクチンは、物凄く有効なものです。しかし、安易に作るとものすごく怖いものだと思います。